先日発表された第148回芥川賞に、作品が選ばれた黒田夏子さんが、受賞後に新聞へ寄せたエッセイのタイトルが、「さかのぼってもいいですか」。
その一節をかいつまんで引用すると―
「受賞すると、受賞第一作というものが期待されるならわしらしいが、ざんねんながら早急には応じがたい老新人のじじょうをいくつか記しておく。
まずは、受賞第一作にあたるものはすでに書かれてしまっている。……それぞれに五、六ねんづつかかった三ぺんから成る作品があって、じじつじょうこれが次作になる。
……もうひとつさかのぼった作品は、一九八四年、四十七さいで書きあげている。しかし七百まいという分量だけからしても無名者の出版交渉がまとまる見こみはなかった。
……ただでさえ一作に十ねんといった今までの歩調ではつぎの完成まで生きているかどうかもあやしくてやくそくのしようもない受賞第一作ではあるが、もしさかのぼっていいのなら七百まいがずっと待っている。」
このウィットにとんだ、75歳の黒田さんのエッセイには、すっかり引きつけられました。
黒田さんのように、一つの道を長い年月にわたって究め続けていらっしゃるかたには、いつも共感をおぼえ、また敬服しますが、とりわけ「生きているうちに見つけてくださいまして、ありがとうございました」という言葉には、ほんとうに地道な努力を積み重ねてこられたかただから発することができる、自負がこめられた重厚な歓喜が感じられ、こちらまで感極まる思いがしました。
前置きが長くなりましたが、じつは1年以上ぶりのBlog再開にあたり、
お伝えしたかったことは一言、「さかのぼってもいいですか」。
Blogを更新しない間、Twitterにて1日1ニュース、日々ほぼ140字で発信することを続けてまいりました。
お読みくださっているお客さまたちから、「もっとそのつづきも知りたいです」と言っていただくことがふえてきました。
ウェブサイトのデザイナーも、「Blogもまた書いてください、Blogのページデザインもマイナーチェンジしておきましたから」と背中を押してくださいました。
黒田さんとはまた違う意味においてですが、さかのぼってよろしいでしょうか。
あいかわらずマイペースで、になりそうですが、すこしずつ、活動を振り返りながら、あらためてお伝えしていきたいと思っております。